3次元計測点群からの円柱形状認識と中心軸推定


 建造物を仮想空間上に復元する技術として,レンジセンサによる計測点群に基づいた手法が挙げられます。 この手法では,レンジセンサから得られた複数の計測点群を,同一空間上に適切に配置する位置合わせ処理が必要となります。

 これまで,都市空間に存在する近代的な建造物を復元対象として,特徴線を用いた位置合わせ手法を提案してきました。 しかし,従来手法では,円柱を含んだ志波城外郭南門を復元する場合,意図しない位置合わせ結果となります。 その要因の一つとして,計測方向に依存した円柱のシルエットの特徴線が一致する場合があることが挙げられます。
 本研究では,計測点群から円柱形状を認識し,その中心軸を推定する手法を提案します。 本手法により推定した中心軸を表す特徴線は,計測方向に依存しないため,位置合わせ処理に有効な特徴線となります。

 従来手法により得られた特徴線,および本手法で推定した円柱の中心軸を表す特徴線を用いることで,円柱形状を含む計測点群の 位置合わせ処理が可能となります。実験では志波城外郭南門の計測点群から円柱の中心軸を推定し本手法の有効性を確認することができました。



■円柱形状認識と中心軸推定

 本研究では,岩手県盛岡市の国指定史跡志波城古代公園内にある外郭南門を復元対象とします. 外郭南門をレンジセンサーで計測し,得られた座標点群から位置合わせを行います.

 志波城外郭南門は,丸柱が用いられており,従来手法では,位置合わせで利用する特徴線を抽出することができませんでした. そこで本研究では,丸柱の形状を点群から推定し,その情報に基づいて特徴線を抽出する手法を提案します.

 まず,従来手法により特徴線を抽出し,特徴線に垂直な平面を3つ生成します. 次に,各平面に載る点群を探索して,平面上に乗っている点群を有理 2次 Bezier 曲線で近似することで, 楕円曲線を生成します.3つの楕円曲線から楕円の中心を算出して,それらを直線で近似することで, 円柱の中心軸を得ることができます.



特徴線に垂直な3つの断面
特徴線に垂直な3つの断面


■実行結果

位置合わせ処理後の計測点群
位置合わせ処理後の計測点群


協 力 : 岩手県盛岡市教育委員会