階層的な領域分割による稜線抽出法


 レンジセンサを使用することで,建造物の幾何情報が点群として得られます.建造物全体の幾何情報を得るためには, 複数の点群を統合する位置合わせ処理が必要になります.

 これまで特徴線の一致を利用した位置合わせ手法を提案してきました. しかし,従来手法では,位置合わせ処理に有効な特徴線を安定的に抽出するために,厳しい測定条件が必要でした. また,有効な特徴線数が少ないため,制限された位置から建造物を測定し, 得られた全ての点群を位置合わせ処理する必要がありました.

 本研究では,従来必要であった測定条件を緩和するために,建造物の稜線を表す特徴線の抽出法を提案します. 本手法は,従来手法で抽出した特徴線を用いて,測定点群を階層的に領域分割します. そして,隣接する二つの領域の境界線として線分を生成することで,稜線を表す特徴線を抽出します. 実験では,測定して得られた点群から稜線を抽出し位置合わせ処理を行い,従来手法との比較を行いました. その結果,本手法の有効性が確認されました.



■領域分割

 本手法では,計測点群から抽出した特徴線を構成する点列を開始点として, 一つの平面領域に属する点群を探索します. その後,平面に属さない残存点群に対して,同様の特徴線抽出を行い, 平面領域を抽出します. 残存点群がなくなるまで, 同様の処理を繰り返すことで ,点群の内部にある特徴線を抽出することが可能となります.



図1a 図1b
(a) 一回目 (b) 最終結果
図1 領域分割の結果

 図1は領域分割の結果です.図1(a) では,各平面領域に属する点群を異なる色で 表しており,中央の灰色部分は領域に属さない残存点群を表しています.
 図1(a) から分かるように,1回の領域分割では,全ての点群を領域分割することができません. そのため,領域分割されなかった残存点群から新たな特徴線を抽出します. そして,抽出した新たな特徴線を用いて点群探索を行い,領域分割を繰り返します. 図1(b)は,最終的な領域分割結果です.この例では,最終的な領域分割回数は3回で あったため,図1(b) では,赤色の平面領域を1回目,緑色の平面領域を2 回目, 青色の平面領域を3 回目に領域分割されたものとして表しています.



図2
図2 二分木で表されるデータ構造


 また, 図1(b) に示した最終的な領域分割後のデータ構造は,図2 に示すような 二分木で表されます.1回目の領域分割によって,単位点群は平面 領域に属する点群と平面領域に属さない残存点群に分割され, 2回目の領域分割結果も同様となります.以上のように,残存点群に対する特徴線抽出と, 平面領域に属する点群の探索を繰り返し行うことで,単位点群が階層的に領域分割されます.



■実行結果

従来の手法による特徴線抽出結果
(a) 測定方向 1 (b) 測定方向 2 (c) 測定方向 3
従来の手法による特徴線抽出結果


本手法による特徴線抽出結果
(a) 測定方向 1 (b) 測定方向 2 (c) 測定方向 3
本手法による特徴線抽出結果


稜線生成に使用した平面領域
(a) 測定方向 1 (b) 測定方向 2 (c) 測定方向 3
稜線生成に使用した平面領域


(a) 点群 (b) 特徴線
位置合わせ処理後の点群と特徴線