石器のソリッドモデル化


 様々な物体形状のディジタル化が推進されている今日、 考古学分野においても埋蔵文化財の3次元モデル化が推進されています。 従来の石器3次元モデル生成法では、まず石器を3次元測定機器で測定し、 サーフェスモデルを生成していました。
 しかし、より広範な応用技術で利用するためには、 従来のように石器の表側と裏側の独立したサーフェスモデルではなく、 コンピュータ内部で石器を完全に表現できる形式である ソリッドモデルで表現する必要があります。

 そこで本研究では、測定によって得られた2枚のサーフェスモデルから ソリッドモデルを生成する手法を研究しています。 これは、表裏の独立した2枚のサーフェスモデルを最適な位置に自動的に配置するための 自動位置合わせ手法と、 位置合わせされた2枚のサーフェスモデルの境界線を縫い合わせソリッドモデル化するための 近似接合法で実現します。

■サーフェスモデル間の位置合わせ手法

 元になる2枚のサーフェスモデルは、それぞれ独立した座標系で表されているので、 これらを同一の3次元空間の適切な位置へ配置します。 そして、サーフェスモデルの境界線に着目し、位置合わせを行います。

本手法の手順は、次のようになります。

 1.2枚のサーフェスモデルを同一の3次元空間に読み込み、サーフェスモデルの表面が、
  z座標の正方向と負方向をそれぞれ向くように配置する。
 2.サーフェスモデルの中心位置を一致させ、次にお互いの境界線を大まかに合わせる。
 3.それぞれの境界線に接触している面の間の距離が最小となるアフィン変換行列を求め、
  2枚のサーフェスモデルの位置を最適化する。



■近似接合法

 2枚のサーフェスモデルを最適な位置へ配置しただけでは、 サーフェスモデル間に隙間ができます。
 そこで、サーフェスモデルの境界線付近の形状を延長して、 2枚のサーフェスモデルを交差させ、閉じた空間を形成します。 その後、サーフェスモデルの交線を計算し、不要な部分を除去することによって、 2枚のサーフェスモデルの境界線を幾何学的に一致させます。

最後に、これらを接合することで、石器ソリッドモデルが完成します。



■石器のソリッドモデル生成例

サーフェス1 サーフェス2
サーフェスモデル1

サーフェスモデル2

位置合わせ後
  位置合わせ後

ソリッドモデル
  ソリッドモデル