山原一輝,今野晃市,千葉史,佐藤真麻:接合資料作成のための石器剥離面に基づく隣接関係検出法 ,   (2011)

  石器の接合資料は,旧石器時代と縄文時代の人々の生活を調査するための重要な資料である. 石器は,石核と呼ばれる原石から剥片と呼ばれるパーツを剥離させ,その後道具として使用するために, 剥片を整形したツールである.石器を作成する過程で排出される剥片を接合し, 石器の加工工程を再現することで,石器製作者の製作意図や行動,技術力,生活範囲などさまざまな情報を得ることができる. 石器の加工工程を再現するためには,同一の石核から製作された石器同士を接合し, 隣接する石器の位置や姿勢を復元する必要がある.しかし,石器の接合資料の作成は手作業で行われているため, 作業には多くの時間と労力がかかる.また,作業には石器が破損するリスクを伴うため,作業者の負担も大きい.
  
そこで本論文では,計測点群から生成したポリゴンモデルを利用して, 接合資料作成のための石器剥離面に基づく隣接関係検出法について提案する. 本手法は,剥離面は滑らかな形状であり,剥離面同士の境界は,稜線を構成していることに着目して, 曲率に基づいて稜線を抽出する. 次に,抽出された稜線で閉領域を構成し,剥離面を抽出する. 最後に,同一の母岩に属している各石器の剥離面同士でペアを作成し, ペアに含まれるポリゴンが幾何学的に一致するかどうかを評価する. その結果,石器間の隣接関係を検出することが可能となる.

  

 

頂点と面の距離の算出方法

石器A からD までの接合結果



千田あゆみ,松山克胤,千葉史,今野晃市:接合資料作成のための計測点群による高速な隣接剥離面探索手法,   (2014).

 石器の接合資料とは,同一の石核から製作された石器同士が接合され,隣接する石器間の位置や姿勢を復元した資料のことである.接合資料の作成は,通常1 つの遺跡から出土した資料群を母集団として行われるが,その中に母岩を復元するために必要な全ての石器が含まれるとは限らない.しかしながら復元のために,出土したすべての石器を対象として組み立てを試行することは難しい.そのため,組み立てをいつ終了するか,すなわち,組み立てにおける終了条件の決定が非常に困難である.また,一般に接合資料作成は試行錯誤を伴う手作業で行われるため,作業者の負担が大きい.従来,計算機を用いて石器の剥離面を抽出し,剥離面同士のマッチングを行うことによって接合資料を作成する手法が提案されている.しかし,従来手法は,複数の石器剥離面が合併し,ひとつの剥離面を構成するような複雑な剥離面に対して探索が困難である.また,探索対象となる全ての石器剥離面に総当りでマッチングを行わなければならないため,探索に非常に時間がかかり,大量の石器に適用することが困難である.そこで,本研究では複数の石器剥離面で構成される複雑な剥離面に対して,隣接する石器を探索できる高速な剥離面探索手法を提案する.本手法では,石器を計測した計測点群から自動的に剥離面上の点群を抽出し,特徴量を計算する.次に,計算した特徴量を用いて,接合する石器の剥離面同士をマッチングして,隣接する剥離面候補を高速に探索する.その後,候補となる剥離面から適切な石器を選出し,姿勢最適化手法を用いて接合する.最後に,接合した2つの石器剥離面と隣接する剥離面を解析して,複数剥離面をひとつの剥離面に併合することで,複雑な剥離面に対しても石器接合資料作成を自動化できることを検証する


  


 

剥離面検出例

接合結果の例

本研究の一部は,科研費24501253 の助成を受けたものである.

E. Altantsetseg, K. Matsuyama, K. KonnoPairwise matching of 3D fragments using fast fourier transform, (2014)

In this paper, we introduce a new method for pairwise matching of broken fragments from unorganized point clouds. We use a new descriptor that contains not only the cluster of feature points but also curves along the principal directions of the cluster. In our method, feature points are extracted by using the curvature values of points. Curves of the descriptor are approximated using Fourier series. The main idea is motivated by comparing descriptor curves between each cluster of matching faces. For comparing curves, the Fourier coefficients of each curve are computed by using Fast Fourier Transform and total energies of curves are compared.


  


 


マッチング例

本研究の一部は,科研費24501253 の助成を受けたものである.