実環境モデリングのための点群統合化手法


■背景

 仮想空間に3次元モデルを生成するための実環境モデリングにおいては,レンジセンサを利用して3次元モデルを獲得する手法が有効です. レンジセンサで対象物を計測することにより,レンジセンサを原点とした座標を持つ3次元の点群を獲得することができます. 説明のために以下では,1回の計測で得られた点群を単位点群と呼ぶことにします. 対象物を仮想空間で復元するためには,対象物の表面を複数の方向から計測し,複数の単位点群を一つの3次元空間に統合化することが必要です.

■目的と手順

 本研究は直線的な特徴を持った近代的な建造物を対象に,特徴線の一致による位置合わせ手法の開発を目的としています. 本手法で用いる特徴線は,建造物の直線的な特徴量を線分で表したものです. 本手法は特徴線の抽出処理と特徴線のマッチング処理に分けられます. 本手法では,はじめに,特徴線の抽出処理を単位点群ごとに行います. 次に,特徴線のマッチング処理を,ユーザーが選択した二つの単位点群ごとに行います. 具体的には,以下の手順で複数の単位点群を統合化します.

・特徴線の抽出処理

  1. 隣接する2点間の奥行き値の差分が大きい点列で構成される3次元デプスエッジを,単位点群から抽出ッジ上の点列となり,セグメントの端点を分割点とする.

  2. 点列セグメントを無限直線で近似し,点列セグメント上の二つの分割点を無限直線上に投影する.投影した2点を連結し線分を生成することで,特徴線が得られる.

・特徴線のマッチング処理
  1. 二つの単位点群間で,一致する可能性が高い特徴線のペアを全て求め,ペアを一致させるような幾何変換を算出する.  

  2. ペアに対する幾何変換が適切であるか評価し,最適な幾何変換を求め単位点群に適用する.

 本手法では,奥行き値の差分を用いて特徴線を求めており,アルゴリズムが単純であるため,実装が容易です. また,同様の理由により,奥行き方向で大きな差分が発生する特徴部分を持つ建造物から,必ず特徴線が抽出されます.

■位置合わせ例
 岩手県盛岡市にある志波城古代公園の外郭南門をレンジセンサを用いて3方向から測定しました.

外郭南門

 以下では単位点群から抽出した特徴線を示しています.
黒線は抽出した特徴線を表し,黄緑色と紫色の太線はマッチング処理で一致した特徴線を
表しています.

 
正面
    
左側 右側

 特徴線のマッチング処理後に統合化した点群を以下に示します.
左図では,3つの測定方向から測定して得られた単位点群ごとに異なる色で表しています.
また,レンジセンサは対象物の表面から反射された輝度値を得ることができます. よって右図では,
得られた輝度値を各点に付与して表示しています.

   
統合化した点群 輝度値を用いた点群表示


■実行結果

 
特徴線 点群
 
特徴線 点群


■2005年度 A&T東北応募作品  技術部門優秀賞を受賞しました.


協 力 : 岩手県盛岡市教育委員会